Life style Hunting by ELEMENTS

vol.3 作家 岩崎夏海×ELEMENTS代表 小西暁久 インタビュー

今回は、大ベストセラー『もし高校野球の女子マネジャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の著者で、
「部屋を考える会」としてヘヤカツについて書いた『部屋を活かせば人生が変わる』という書籍も出版されている岩崎夏海先生(以下、岩崎)に、
ELEMENTS代表の小西暁久(以下、小西)がインタビューしてきました。

岩崎先生と小西代表の対談風景

小西 岩崎先生といえば『もしドラ』の著者として ご存知の方が多いと思いますが、ヘヤカツというキー ワードを考えられたきっかけは何かあったのでしょうか。

岩崎 『もしドラ』を出版して成功の秘訣やヒットの要因を頻繁に聞かれたのですが、自分自身では“引っ越し”が大きなターニングポイントだったと思っているんです。仕事の都合で部屋を3LDKから18平米のワンルームに移らねばならなくなりました。今までから考えると圧倒的に狭い部屋に住むことになりますから、物理的に今までの物を全て置くことはできない。その際にどうしたものかと悩んで、「よし、全部置いていこう」と捨てることに決めました。そう決めたらなんだか一気に開き直ったのです。人間はなかなか変われないが、「環境」は作れる。それを感じた瞬間でした。狭い部屋に移ることがきっかけで片付けやすい部屋を意識的に作るように変りました。それは快適で心地よいものであり、結果として『もしドラ』を生みだし人生が変わるきっかけになったと思っています。

小西 だからヘヤカツは「部屋を活かす」という意味が込められているのですね。御著書でも「天才とは、環境で得られる後天的なもの」とおっしゃっていますが、環境作りで注意するべきポイントはありますか?

岩崎 とにかく清潔にすることです。これは部屋の環境作りでもそうですが、頭の環境作りにも重要な視点です。

小西 脳内を清潔にしておく、ということですか。

岩崎 そうです。コレクトな状況でコレクトなことをいう。単純ですが、会議で「あのときこう言えばよかった」という後悔はしないことに越したことなない。部屋の片付け方は脳の片付け方と同じです。例えばお味噌汁を作っているときにおたまをすぐに出せる状況かどうかといったように、適切なタイミングで適切な道具を出せるということは、脳内が清潔に保たれている証拠です。

インタビューの風景。

小西 清潔に整理をしておく、ということはその場その場のチャンスをつかむことに直結しているのですね。そういった整理力とは持って生まれた才能なのでしょうか。

岩崎 いえ、整理力は“記憶の訓練”で変えられます。もっとも簡単な訓練は、使用頻度を増やすことです。脳内にある引き出しを整理整頓して、どこに何があるかを記憶するために何回も話す。何回も聞いたり、何回も書いたり。記憶するという力は訓練で強化することができます。記憶力と聞くと短絡的にインプットを増やすことだと思いがちなのですが、実はアウトプットすることで強固なものに変わっていきます。

「部屋を活かせば人生が変わる」、「整理力」は記憶の訓練次第と論じてくださいました。

小西 岩崎先生にとっては、アウトプットの一つとしての部屋なのですね。だから、あえて完成させないで試行錯誤も必要であると?

岩崎 そういうことです。

小西 我々のお客様はお部屋のあり方の延長線上に、暮らしのあり方を考えられる方が多くいらっしゃいます。暮らしにおいても、何か意識的に行なっていることはありますか?

岩崎 余裕を持つということ。それに尽きます。なぜなら、私にとって働くということと暮らすということが密接に関わっているからです。重要なのは、生産性をど う高めるか。数秒が重要なのです。もう少し具体的に言いますと、閃きの一瞬をどう作るか。余裕のない人にはその一瞬はなかなか訪れないし、訪れていてもスルーしてしまう可能性がある。それはとても勿体無いことです。余談ですが、私が放送作家だった時に、とても尊敬している方に「本当に忙しい人はかっこわるい。」と言われて、それから忙しいという言葉を禁句にしました。忙しいと言っている人は余裕がない。それは自分自身にとって、とても悪影響だと考えています。だから、部屋だけでなく、なるべく余裕を持つことで自分自身のチャンスを引き寄せる暮らし方を意識していますね。

小西 『ヘヤカツ』でも部屋に余白を作るとおっしゃっていたのにも繋がるお話ですね。弊社のブランドでも、サイトの中で見せるインテリアコーディネートを組む際に、意識的に余白を作るようにしています。部屋を快適に保つ秘訣は御著書のなかで十分に語られていると思いますが、下手すると部屋が淀む原因になりかねないインテリアという存在をどう選んでいらっしゃいますでしょうか。

岩崎 部屋が淀まないように、あえて部屋を完成させないようにインテリアを選ぶようにしています。部屋はいつでも可変であり、余白を用意することが必要だと考えています。あとは、機能面だけでなく、「○○っぽくない」「デザイン性が高い」というデザイン性にこだわった家具を部屋に置くことも重要視しています。判断するタイミングがあると、私は必ず「美しいもの」 を選ぶようにしています。日常生活の中で美的感覚を養うことは生命力に繋がると思っているので、美しくないものが人生に現れると生きていく過程で淀みが出るんじゃないかな。

小西 余白の用意と美的感覚を養う−インテリアを選ぶということは人生に繋がっていることなのですね。奥が深いです。自分の好みや自分らしさについてはどうでしょうか。最近ではネットもそうですが身の回りにものが溢れていて、どういう視点で選び取っていったら良いのでしょうか。

岩崎 自分らしさっていうものは自己催眠になりがちなものだと考えます。「自分のことはわかっていない」という前提に立つべきです。あくまで自分なんてものはいつでも探している途中であって、自分をも可変的に考えると気楽になりますよ。

小西 自分らしさを規定しないということは、気楽でもありますが、探し続けなければならない辛さみたいなものもありますね。

岩崎 そうですね、気をつけたいのは楽しみながら探すということではないでしょうか。例えば、自分を試すように一点だけ高い物を買ってみたりする。1000円のものを1000回繰り返していても、100万のものを買わないとわからない失敗がある。重要なのは長い人生において失敗の「正解」を知るべきで、失敗経験があると自分にとって何が必要か段々分かってきて、自然と自分らしさに溢れた部屋に変わっていくと思います。そんな中でもいつでも変われる余白大事ですけどね!

小西 部屋の話をすると、その人の人生観が見えてくる。岩崎先生のお話を聞いていて、そう確信しました。本日はありがとうございました。

インタビューを終えて

その経歴からは想像できないほど、穏やかな話しぶりでインタビューに応えてくださった岩崎先生。
話される言葉のセレクトはやはり秀逸で、誰が聞いてもスッと頭の中に入ってくるものでした。

今回のインタビューは先生の事務所で行わせていただきました。
外観が少しレトロな建物に、選りすぐられたインテリアがセンス良く配置された部屋。
機能性が高いのにリラックス感もある、まさに理想的な仕事場は真似したくなるほど魅力的でした。

LifestyleHunter

岩崎 夏海
[NATSUMI IWASAKI]

作家。
1968年生まれ。東京都日野市出身。
東京芸術大学建築科卒。 大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。
放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』等、テレビ番組の制作に参加。
その後、アイドルグループAKB48のプロデュースにも携わる。
2009年、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を著す。
2015年、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』 。
2018年、『ぼくは泣かないー甲子園だけが高校野球ではない』他、著作多数。
現在は、有料メルマガ「ハックルベリーに会いに行く」( http://ch.nicovideo.jp/channel/huckleberry )にてコラムを連載中。

[著書紹介]
もしドラ
もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの「マネジメント」を読んだら

岩崎夏海 著
「ヘヤカツ」
部屋を活かせば人生が変わる

部屋を考える会 著